ひとつひとつの文字に個性と想いを。ぽけっとの会オリジナルかるた制作秘話 その1

ぽけっとの会創立20周年の記念品として、ぽけっとの会ではオリジナルかるたを作りました。
かるたというと子供向けというイメージですが、ぽけっとの会のかるたは赤ちゃんから大人が楽しめるものです。
この企画のために結成されたかるたチームのこだわりで、たっぷりとぽけっとの会らしさが詰まっているのです。

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すべての会員が参加でき、49家族の個性と想いのつまった記念品を作りたかった

企画のきっかけや、こだわった部分を教えてください。

ぽけっとの会の創立20周年で、何か記念品を作りたいよねとなって—-。
役員が集まり案を出し合いました。最初はTシャツ、ペン、タオルなどノベルティのような案が出たのですがなんかピンとこないねと。その後「子供達が遊べるものは?」とトランプ案が出ました。
トランプに子供の写真使ったら可愛いかななど、クリエイティブな発想に変わっていきました。そして「かるたは?」「あ!おもしろいかも!」「みんなに絵札を書いてもらったらいい」「読札も考えてもらったら面白いね」「ダウン症あるあるをテーマにしたら?」とイメージが膨らみ「あ!会員数が49だからちょうどいいよね!」「ぽけっとかるた面白いかも!」と決まりました。

その後は予算とかるた印刷の業者を決めるのが大変でした。
かるたの印刷の発注・デザイン・納品までの業者とのやり取りについては専門知識のあるメンバーがいなかったので予算感がわからず、ネットで様々な業者を探しました。なるべく安く楽にできる業者を選ぶのに苦労しました。業者さんの見積もりは我々がイメージしていた予算の倍程。50部発注という小ロットに対応してくださる業者さんもなかなかありませんでした。発注できても小ロットですと単価も高くなります。

様々な方が会員の親の会なので、なるべく負担なく制作したい気持ちがありました。かるたは紙が厚いことで印刷の中でも特殊なものなのでかるた専門の業者でないとお願いできないのです。何度も話し合って、やはり印刷して箱に入れるまでやってくれる専門の業者にお願いしたいという方向性になりました。

役員の中から2名がかるたリーダーになりいよいよかるた作りが始まりました。

やると決まったら、次はデザインをどうしたものかとなりました。
業者に頼むとさらにお金がかかるのでそれはできない。印刷関係の仕事をしているパパとホームページ担当のママが分業で制作をすることになり、ようやく「なんとかなるぞ」とホッとなりました。

最も肝を冷やしたのはスケジュールでした。
12月22日のクリスマス会にサンタさんのプレゼントとして用意したいという計画でした。
最初の話し合いから業者を決めたのが9月中旬。業者とのやり取り担当のリーダーが、ギリギリまで納期を伸ばしてもらえないかと交渉をして、その日から逆算してスケジュールを組みました。

「どうやったら正しく伝わるか」を考えることで思わぬ良い経験

大変だったこと、嬉しかったことなどエピソードはありますか?

一番大変だったことは、皆さんに絵札の作り方をどのように伝えるかということでした。専門用語を使わず、誰もが理解できるような伝え方。かるたの制作チームの中でも何度も言い換えてようやく共通理解ができるという感じでした。つまり、これは印刷の素人の会員に伝えるのは至難の業。
例えば「絵札の文字が入る場所に絵を書いてしまわないように」と伝えるのには具体的に下敷きになるものも用意して「絵を描く時にここの丸に絵を入れない」と注意書きもする。

以前、ぽけっとの会では知的障がい者の疑似体験のイベントをしたのですが、まさにそれの体験のような感じでしたね。なかなか伝わらない時は「まるであの疑似体験だね(笑)」とお互いに思わず笑ってしまいました。

担当者の作業効率を配慮して、絵を描く紙の印刷も各自でお願いしたいところでしたが、そうするとサイズを小さく印刷してしまう人もいるだろうと、制作に必要な資料もすべて印刷して会員に郵送して依頼するというような感じで、準備にも配慮と時間が必要でした。

かるたチームの担当はそれぞれに日中仕事をしている為、集まるのは週末で、最初の数回だけでした。担当割と方向性が決まったら、納品まではLINEや電話やメールで進めました。昔の親の会だったらみんなで集まってワイワイやっていたのでしょうがぽけっとの会も時代の変化とともに変わってきています。
面と向かって説明をできないので、相手に伝えることの難しさはあります。

発送・収集も一苦労

出来上がった物を集めるのにも一苦労でした。「まだ書いていない」「用紙を無くした」など(笑)。絵札については、規定の解像度になっているか、著作権のチェックの必要もありました。

チームで集まる時間がないので、発送・収集の担当は自宅で一人で作業しました。
下敷きをオリジナルで作ったり、印刷したり。締め切りまで余裕もない状況でしたので、本業の仕事を持ちながらのこの作業は正直キャパオーバーでした。しかし、完成したときには、頑張ってよかったーと、疲労も忘れるほど出来の良さに感激しましたが。この記事を読んでかるたを作ってみたいと思った親の会の方がいらっしゃったら、最低半年前からの準備をおすすめします!!

かるたのテーマと提案の仕方の工夫でより良い仕上がりに

工夫したことは、絵札と読札のテーマです。
会員の皆さんに各自1文字を割り振り制作をお願いしました。
ぽけっとの会らしさ、ダウン症らしさが出るものにしたいということで「ダウン症あるある」をお題にしました。さらに「うちの子あるあるもOK」として自由な発想で皆さんが楽しく参加できるものにしました。

絵札のクリエイティブについては、クレヨンや絵具で描くという概念をお持ちの方が多いと思ったので、「もっと自由に作っていいよ」と、具体的な制作事例を写真でいくつか用意ししました。例えば絵で表現するのが困難な子は写真を使ったり、各自、各家庭でより良いものを楽しく作れるように提案したので個性豊かな絵札が出来上がってきました。

↓事前にサンプルを作り、自分の絵がどのように配置されるかをイメージしやすく配慮をしました
かるた制作事例1
↓写真の方にもNGとOK事例を用意
かるた制作事例1

※著作権の関係で画像にモザイクをかけています

制作エピソード

実は、お子さんが入院中で今回の制作を辞退されたご家族がいらっしゃいました。その札はかるたチームが相談して代りに作りました。かるた制作は辞退とのことでしたが、やはり全ての会員に参加して欲しいという想いが強くて、ご本人にはお伝えしていませんが実はお子さんに関することを盛り込んで作ったのです。ささやかですが応援の気持ちが入っています。

グループホームにお住まいの方はホームのスタッフの皆さんと協力して作ってくださったようです。制作したものから、ご本人が生活している所での人間模様が垣間見れ、暖かな気持になりました。子供が成人してから支えてくださる社会の皆さんの存在の大きさも知ることができました。
そういった意味でもかるた制作を企画してよかったなと感じました。

納品されたかるた

届いた段ボールを開けると、カラフルなかるたがぎっしりと!担当者はすぐに写真を撮り良いものが出来上がった喜びをチームのメンバーとLINEで共有しました。

絵札と読札には、それぞれの多様な「ダウン症あるある」が!

制作チームもどのような物が返信されてくるか、とにかく楽しみでした。
こんなに個性豊かなかるたが揃うとは正直思っていませんでしたので「いい意味で裏切られて嬉しい!」といった感想です。
子供達のこれからの人生も、いい意味で裏切ってくれるのではと、期待が膨らみますね。
では、出来上がったものをいくつかご紹介します。

かるた せ↑いつも仲良しのきょうだいのそれぞれの「好き」も詰まったかるたです
かるた つ↑沢山の優しさに包まれて生活している様子がうかがえますね
かるた と↑読札だけだとわかりませんが…絵札を見てかるたに書きたかった訳に納得!!
かるた に↑本当にダウン症のある子供達のニコニコ笑顔に癒されますね
かるた ね↑身体の柔らかさの「あるある」は誰もが共感!この柔らかさに「えぇ?!」と驚かれる経験をされた方が多いのでは?
かるた は↑そうなのです、はっきり言いたいほどガンコな子がけっこう多いですよねぇ
かるた み↑産まれたばかりの頃はみんな似ていると思うのですが、数年経つと色々な意味でそれぞれけっこう違うと思います
かるた む↑文明の力で安心できる良い時代になりました。とにかく携帯を忘れずに!
かるた ゆ↑成長がゆっくりなのもダウン症の特徴の1つ。花が咲く時を楽しみに待っている様子に共感できる方も多いのではないでしょうか
かるた れ↑小さい頃から身につけた「練習を頑張ること」はとても人生を豊かにすると気づかされます
かるた わ↑わからないことを「わからない」と言える尊さ!Tシャツの「ラーメンだいすき」も共感ポイント
かるた ぎ↑「良かったね!」と言いたくなる親子の歴史が詰まった一枚です
かるた げ↑グループホームのヘルパーさんと作ったそうです。楽しそうな日々が伝わってきます

この他にも個性豊かなかるたが沢山!こちらでご紹介しています >>

やさしさと楽しさがあるぽけっとの会らしい箱のデザイン

箱のデザインはどなたがされましたか?

箱のデザインの模様は21歳のお兄さん、りん君にお願いしました。
デザインテイストは「ご自由にお願いします!おまかせします!」と依頼しました。りん君は色鉛筆で彩色してくれました。仕上がった原画はとてもやさしい雰囲気と楽しい感じがあり、ぽけっとの会のイメージにピッタリでした。
原画のやさしさと楽しさを活かした箱のデザインに整え、20周年に相応しい素敵なものが出来ました。
「ダウン症のある人のありのままと共に」と、この箱で表現できたようで大満足です!
素敵な模様でしたので、20周年の企画のデザイン制作や、クリスマス会のプログラムやウェルカムボードにも使わせていただきました。
かるた箱デザイン
りん君はお仕事をしながら得意なイラストで制作活動もされています。
ネットでオリジナル商品も販売していますので是非覗いてみてください!
※「りん」とサインしてあるものがりんくんのデザインした商品です。
コドモガジェット >>

みんなが“その人らしく”使ってくれたら嬉しい

かるたをどのように使ってもらいたいですか?

このかるたはその人らしく使っていただければいいなぁと思っています。
平仮名のわかるお子さんは普通にかるたとして使っていただき、平仮名はまだ勉強中のお子さんはこのかるたで平仮名に親しむきっかけにしていただくなど。

サンタプレゼント開封

クリスマス会でサンタさんからかるたをもらって早速遊んでいた幼児さん

かるたとして使わなくても、会員の子供達の個性や家庭の様子を読み取って面白がっていただくのも楽しいのではないでしょうか。
会員の個性と想いが様々つまった作品ですので、想い出として大切に保管していただいてもいいと思います。

かるたチームの皆は…みんなどんな風に使っているのかなぁ、と気になりますね!

日本ダウン症協会の会報でご紹介いただきました

日本ダウン症協会の会報「JDSニュース第553号」にてぽけっとの会の周年行事の活動“かるた制作”についてご紹介いただきました。こちらの会報を見て「私たちも作りたい!」という方は是非チャレンジしてみてください。
ぽけっとの会のかるたとはまた全然違うものが出来上がるはず。「我がダウン症のある子供、ダウン症のある人って、おもしろい」という経験ができるのでおすすめです。

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いかがでしたでしょうか。
それぞれに色々と大変なこともありましたが、仲間のパワーで救われました。なにより、出来上がりが本当に素敵だったのでそれで疲れは吹っ飛びました。
20周年の良い記念品ができたと思います。

今回の制作でお世話になったのはオリジナルかるた.comです。オリジナルかるた.comの皆様、ギリギリのスケジュールや不慣れな私たちに丁寧にご対応していただきありがとうございました。